長引く咳にはご用心

今、「百日咳」という病気が、世界中で流行しています。
百日咳は、約4年周期で流行すると知られている病気で、2022年には、499件の百日咳が報告されていましたが、2023年には、1009件 2024年には4054件と増加しています。
今年、2025年4月までの報告件数は、すでに7000件を超えているようです。
百日咳は、その名の通り咳が長く続く病気で、ワクチンで予防することができます。しかし、ワクチンの効果は、個人差はありますが4年~12年で弱まると言われています。
そのため、子供に多い病気とされてきた百日咳が、ワクチン効果の薄れてきた大人に急増しています。
百日咳の主な症状
百日咳の症状は、子供と大人では大きく異なります。
大人の症状は比較的軽いため、ただの風邪と勘違いしやすく、気づかぬうちに感染を広めてしまう恐れがあります。
咳が1週間以上続く場合は、百日咳の可能性があるので注意が必要です。
乳幼児を含む子供の場合は、次のような症状がみられます。
1カタル期 (風邪のような症状の時期・1~2週間程度)
・軽い咳
・鼻水
・微熱
など 風邪と区別がつきにくい時期です
2痙咳(けいがい)期 (発作性の咳が出る時期・2~3週間)
・発作的な咳
・息を吸う時にヒューと音が出る
・咳に伴う嘔吐
・息が詰まるため、顔がむくむ
など 乳幼児の場合は、咳をあまりせずに無呼吸になったり、痙攣を起こし呼吸が止まってしまう事があるので、注意が必要です
3回復期 (症状が軽くなる時期・2~3週間)
・咳の発作が少なくなる
・おさまっていたと思ったら、急に発作がぶりかえす事もある
など 症状はだいぶおさまってきますが、急に発作が起こる可能性があるため、注意が必要です
このように、子供や乳幼児の場合は、重症化する可能性があります。
高齢者の百日咳
高齢者も百日咳に感染する可能性は十分にあるため、注意しましょう。
高齢者の場合は、咳をこじらせ肺炎や気管支炎を引き起こす可能性があります。
また、咳による体力低下、免疫力の低下により、他の感染症にかかりやすくなってしまうので注意しましょう。
加齢や骨粗しょう症などにより、若い人に比べると、骨が折れやすくなっているため、咳により肋骨を骨折する可能性もあります。
感染経路
百日咳は、人から人へ感染する病気です。
主な感染経路としては、飛沫感染と接触感染が上げられます。
飛沫感染
感染者の咳やくしゃみなどによって飛んだ、菌を含んだ飛沫を吸い込むことによって感染する
接触感染
菌が付着した手で目をこすったり、鼻をかんだりする際、目や鼻の粘膜から菌が体内に入り込む事により感染する
感染対策
飛沫感染や接触感染を防ぐため、マスクの着用や、こまめな手洗いうがいを心がけましょう。
アルコール消毒も有効的です。
大人の百日咳は、重症化することが少ないため、自覚のないまま子供に感染させてしまう可能性があります。
長引く咳などの症状がある場合は、念のため病院に行きましょう。
家族に小さいお子さんがいる場合、感染には特に気を付けなければなりません。
マスクを着用し、感染を広げない事も重要です。
ワクチン
百日咳には、有効なワクチンがあります。
日本ではワクチンが定期接種となっており、生後3か月から計4回の接種を原則無料で受けることができます。
乳児が百日咳に感染すると重症化しやすいため、接種可能月齢になったらできるだけ早めに予防接種を受けましょう。
ただ、このワクチンには欠点があり、ワクチンの効果は4年~12年程度で、徐々に弱まってしまいます。
そのため、乳児のころにワクチンを受けた年齢の高い子供や、大人が感染し、発症してしまう事があります。
子供のころにワクチンを接種しているから大丈夫だろうと油断せず、咳が続いたりする場合は、念のため医療機関を受診しましょう。
もちろん、大人も百日咳のワクチンを接種する事ができるので、ワクチンを受けたい場合は、医療機関へ相談しましょう。
百日咳の治療
百日咳の治療は、一般的には抗生物質の服用で菌を死滅させます。
服用開始から1週間程度で百日咳の感染力はなくなるとされていますが、体内の菌が完全に死滅するまでは、約2週間程度掛かるため、症状が無くなったからと言って、薬の服用を自己判断で止めるのは、やめましょう。
また、抗生物質は、咳が出始めて2~3週間程度(痙咳期)経つと、効かなくなってしまいます。そのため、早目の医療機関受診が望ましいです。
百日咳は、咳が出始めてから、咳の症状が無くなるまで、3か月程度かかります。
そのため、百日咳と呼ばれてきました。
大人は重症化することが少なく、「咳が長引いていたけど、気づいたら咳が出なくなっていた」など、百日咳に感染している自覚のない人もいます。
大人にとっては、それほど怖い病気ではないのかも知れませんが、小さな子供や高齢者が感染してしまうと、重症化してしまったり、別の病気を引き起こしてしまう事もあります。
咳が長引く場合は、周りに感染を広げないためにも、医療機関を受診し、マスクの着用を心がけましょう。