高齢者の熱中症対策
今年(2024年)の夏は特に暑く、猛暑日(35℃以上)となる日も珍しくありませんでした。
8月7日からは、暦の上では秋となりましたが、8月の後半も暑い日が続き、9月に入ってからも、真夏日(30℃以上)を観測し、熱中症の患者も増え続けています。
今年の夏(6月~8月)の全国の平均気温は、平年と比べ1.76℃ 高く、1898年に統計を取り始めてから、昨年(2023年)に並び、最も暑い夏となりました。
この記録的な暑さの中、4月から9月1日までに、熱中症で病院に搬送された人数は、全国で8万5475人となり、昨年のほぼ同じ時期と比べると、2749人増えています。
近年、熱中症の患者数は、増加傾向で推移しているようです。
熱中症年齢別の割合
今年の4月から9月1日までの、熱中症で病院に搬送された人数(8万5475人)の、年齢別の割合を見てみましょう。
65歳以上の高齢者
4万9575人
18歳以上65歳未満
2万7813人
7歳以上18歳未満
7550人
7歳未満
537人
65歳以上の高齢者の割合が最も多く、全体の半数以上を占めています。
高齢者は熱中症になりやすい?
このように、65歳以上の高齢者が、熱中症で病院に搬送される割合が高い事がわかります。
では、なぜ高齢者は熱中症になりやすいのでしょうか。
1体温調節機能の低下
高齢者は、気温を感じる機能が低下しているため、熱を外に放出しようとする反応(血管を拡張させたり、汗を出す)が鈍くなります。
また、高齢者は汗を出す「汗腺」の量も少なくなっているため、発汗機能も低下していて、体温をうまく下げることが難しくなります。
2体内の水分量の低下
成人の体の約60%は水分でできていますが、高齢者になると、その水分量は50%に低下すると言われています。
そのため、脱水症状になりやすく、体温を冷やすための汗の量も減ってしまいます。
3のどの渇きを感じにくい
知覚神経の働きが鈍くなってしまうため、のどの渇きを感じづらく、水分補給が遅れてしまう。
その他
高齢者の方は、持病のある方が多く、心疾患や糖尿病など、その疾患の作用により、体温調整が難しくなったり、服用している薬の副作用によって、脱水状態になりやすくなる可能性があります。
また、認知機能が低下している方は、熱中症になっている事に自分では気づけない事もあります。その場合、熱中症が重症化する可能性もあるので、注意が必要です。
高齢者の熱中症対策
熱中症を発症する場所は、屋外よりも室内の方が多くなっています。
熱中症は屋外で発症するというイメージも強く、家の中だから大丈夫だろうという先入観から、エアコンを使うタイミングが遅れたり、水分補給が十分されないことも多いようです。
高齢者は、家にいる時間が比較的長いので、ここでは室内での熱中症対策を見てみたいと思います。
1室内の温度管理
部屋の温度が28℃以上にならないよう、エアコンや扇風機を使って温度管理をしましょう。
高齢者の中には、エアコンを使う事に抵抗を覚える方が多いようです。
自動的に起動するように、タイマーを設定しておくと安心です。
同じ室内でも、日当たりによって気温が高くなる場所もあります。温度計で気温を計測しましょう。
2こまめな水分補給
高齢者は、のどの渇きに気づきづらいので、水分補給が遅れてしまいます。
のどが渇く前に、水分補給しましょう。
時間を決めて、コップ一杯の水を飲むのも有効的です。
例えば、10時 11時 12時と時間を決めて、必ず水分を採るようにすれば、脱水症状を防ぐことができます。
お茶の時間を設けるのも良いでしょう。
午前と午後にお茶の時間を作ってみましょう。おやつを食べ、お茶を楽しみながら水分を補給できます。
トイレに行くのが困難な方は、トイレを気にして水分を採らないという事もあるようです。
ポータブルトイレなどを設置し、トイレの不安を解消させましょう。
水を飲みこむことが難しい場合は、水分補給用のゼリーを使うのもよいでしょう。
このように、室内での熱中症対策としては、温度管理と水分補給が重要となります。
就寝時に熱中症になる高齢者も多く、エアコンや扇風機などで温度管理をしっかりしなくてはなりませんし、寝る前の水分補給も重要です。
お風呂でもかなり汗をかくので、お風呂の前後で水分を補給するのも、熱中症対策に有効ですし、夏場は、お風呂の温度もぬるめにしておくと良いでしょう。
熱中症にかかってしまったら
熱中症の重症度は大きく3段階に分かれています
Ⅰ度(軽症)
めまい、立ち眩み、筋肉痛
この症状が現れたら、軽度の熱中症の疑いがあります。
涼しい場所で休む、水分を補給する
Ⅱ度(中等症)
発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、倦怠感など
意識があっても、この症状が出たら非常に危険な状態です。
涼しい場所に避難、水分補給 の応急処置をしたらすぐに病院へ
重症化の一歩手前の可能もあります。意識がぼんやりしているなど、普段と違う様子が見られたら、救急車を呼びましょう。
Ⅲ度(重症)
高熱、意識障害、痙攣(けいれん)、呼吸困難
ふらつきや、呼びかけへの反応が鈍い、言動が不自然など、意識に異常が見られる場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
意識が無い場合、水を飲ませるのは危険です。応急処置としては、涼しい場所に避難させ、体温を下げることです。
その他、高齢者の熱中症を見分けるポイント
肌が乾燥している
肌が乾燥していたら、脱水の可能性があります。
食欲不振
胃腸の働きが低下し、吐き気などの症状が出る場合があります。
体が熱い
暑い時期の発熱は、熱中症の疑いがあります。
近年、温暖化などの影響により、気温の高い日が多くなっているようです。
高齢者だけでなく、子供からお年寄りまで、皆さん熱中症には十分気を付けましょう。
小さなお子さんや、高齢者の方は、自分が熱中症にかかっている事に気づいていないケースもあります。
周りの人が注意し、変化に気づいてあげる事が大切です。